教員の大切な仕事の一つ、定期テストづくり。教科指導において成績をつけるのに多くのウェイトを占める大変重要なものです。私自身、先生が赤ペンで○付けをする姿に結構憧れがあったものですが、実際にいざテストを作ってみると、「こんなに大変なのかーーーーーー!!!」と初めてその苦労を痛感しました。実際に、現役の先生たちも、テスト前になると「あー…。テスト作んないとやべえなぁ。」と腰が重そうにおっしゃっています(笑)。実際にテストを作る時が来たら、いや、作らなくてもいい今のうちから、以下を読んでテスト作りについてイメージを持っておきましょう。
テストってどのくらいで完成する??
4月1日。実際に教員になり、ドキドキしながら着任校の職員室に入ったあなたは、きっと初日から分刻みのスケジュールで訳もわからぬまま会議に参加し、目の回るような一日を過ごすことになるでしょう。その日から、あなたは一教員として、様々な職務にあたることになります。もちろん、児童生徒に直接関わる教科指導や学級経営、部活動等もありますが、実際には学年や校務分掌、各行事において担う仕事が他にもたくさんあるのです(詳しくは後日また記事にします)。
そのようにたくさんの仕事を抱えて右も左もわからない中で、なんとか日々授業をし、迎えた5月半ば。あなたは一つの大仕事に取り掛かることになります。定期テストです。(副教科の方は期末試験のみで6月末ごろになるかもしれませんね。学校によっても様々です。)
突然ですが、定期テストを一から作って完成させるまで、どのくらいの時間がかかると思いますか?○時間くらい、と是非予想を立ててみてください。
未知なるテスト作り
今回も私の失敗談を通して実際のイメージをもっていただければと思います。
教員になって1年目の5月半ば。中3生の副担任だったため、中3生の社会科は自分一人でみていました。受験に直結するため、日々多大なプレッシャーを感じつつ、緊張してすごしていましたが、なにせ講師経験もなく授業をするのが初めてだったため、毎日自転車操業状態でした。しかも、先に上げた教科指導や学年の仕事、校務分掌等の他に、1年目には初任者研修があり、研究授業の学習指導案等も作らねばなりません。1週間先、1ヶ月先のことまで手を回す余裕など到底ありませんでした。
そんな中やってきたテスト期間。1週間前になり部活動もお休みとなりました。職員室もどこかほんわかとして、久々に早く帰宅する先生もちらほら。
「テストどうやって作ろう。資料(社会なので地図や年表など)は、一から自分で作るのかなぁ…大変だなぁ。そんなスキルないから、地図の作り方とか勉強しなくちゃ。」
地図を自分で作る…今から思うと、本当にテスト作りをなめていたなぁと思います(笑)そんなことしていたら、きっと完成するまで1年かかっていたことでしょう。
とりあえず、指導教諭に頭を下げて、どんな風にテストを作っていらっしゃるのか教えを請うたところ、なんと過去問題を印刷して渡してくださいました。(「先生、神!!!!」と思いました。)そこには、どこかで見たことあるような地図が。聞いてみると、授業で使用する教材会社の教材(ワーク、資料集など)に、教育現場で使ってよしとする資料がデータ化されCDにまとまってついてくるのだとか。早速それをゲットし、テストに使わせてもらうことにしました。
こんなに時間がかかるなんて…!!!
早速開いてみると、まずはどの資料を使うかに頭を使います。「この地図いいんだけど、この川に○Aってついているのが余計だなぁ」「この年表使いたいけど、下の方はまだ授業でやってないから使えないなあ」と、なかなかしっくり来るものがないので、今度は問題の出し方を少し変えたり、他の資料にもあたって比較してみたりと、すんなりとは進みません。そんなこんなでもう21時。4時間かけたのに、出来たのはたったの数問。得点にして10点もないくらいです。
「え…これだけ??」愕然としました。しかし日々の疲れも溜まっているし、明日も授業がある。他の仕事もある。テストは、言ってもまだ一週間あると、その後に及んでもまだ危機感がもてず(未知って怖い…)次の日へ持ち越すことにしました。
次の日も次の日も、生徒が下校し、少し落ち着いた後、テスト作りをしました。しかし、ペースは全く速まらず。ここら辺でやっと「このペースでは到底間に合わない!」と初日のペースが「初日だから」ではなかったことに気づき、ついに深夜まで連日テスト作りをすることに。土日も返上。学校に午前中から夜までいると、さすがに泣きたくなってきました。救いは、休日出勤している先生が結構いらっしゃったこと。やはりテストはベテランの先生でも時間をかけるものなのだ、とここでやっと学ぶ私。しかし、だんだんと先輩方は確実にゴールへと近づいている。「明日印刷しようかなー」なんて声が聞こえてくる。「え???印刷?もう出来てるの?!」半分くらいしかできてなくてさらに焦る私。元々、要領が悪い性格なので、何事も人より時間がかかるのですが、この時、テスト作りを本当になめていたなぁと感じました。
迎えたテスト前日、当然皆さん印刷し終わっている中、私はまだ完成せず…。同期のもう一人と学校に残り、半泣きになりながらやっとの思いで完成。配点や誤字脱字がないか、見直します。すると、誤字脱字、配点間違いがボロボロ見つかります。もう、半分パニックです(笑)。時間は22時を過ぎています。やっと完成したと思ったのに、印刷までまだ到達できない!4度、5度くらい見直しをして、ようやく印刷し始めたのが0時。こんな時間まで学校にいることになるとは。普通ならさすがに少し怖くなったりするのかもしれませんが、もう怖さを感じる余裕もありませんでした(笑)。
担当している3年生の100点分と、2年生の50点分、ようやく全て刷り終え、最終確認をしていると…全部直したはずなのに、まだミスが!!!焦っていて見落としたのでしょう。結局その箇所を直し、刷り直しました。全て終わったのは午前2時過ぎでした…。
大変なのはテスト後も…
迎えたテスト当日。ものすごく緊張したのを覚えていますし、作る側として何回テストを経験しても、私は毎回緊張しました。ほとんどの生徒はそれに賭け猛勉強してきます。そのテストの1点で評定が変わり、志望校や併願校を成功せねばならない生徒も出るかもしれません。責任は重大です。
なんとかテスト自体は無事終了。しかし、テストに関する仕事はやっと半分終わっただけ。その後は「採点」が待っていました。これもまた、多くの時間を要するのです。仮に、一人の生徒の答案に、早くて3分かかったとして、生徒が100人いたら300分。5時間です。しかも、3分であれば、配点はすべて2点、解答もすべて記号、などかなり単純化されている場合でしょう。記述を入れたり、配点を細かく変えたりしていたら、時間はもっとかかります。しかも、「観点別評価」という仕組み上、ただ全てをトータルして計算して終わりではなく、4つの観点別(関心意欲・思考判断・資料活用。知識理解)に得点を算出しなければなりません(この観点に沿って問題を作成するのも初めは至難の業でした)。
初めてのテスト作りで、行き当たりばったりで作ってしまった私。無事に平均点は60点そこそこと標準的になりましたが、採点のことを何も考えずに作ったため、採点する自分に全然優しくないテストとなってしまいました。一つの大問の中に、観点の違う問があり、しかも配点も1点だったり2点だったり。数えるだけで時間を食ってしまいます。
「もう、明日返却するのはあきらめようか…」とも思いましたが、初任でただでさえいつも迷惑をかけている私。生徒がとにかく早く答案が見たがっているのは重々わかっていました。このような機会にちゃんと期待に応えなくてどうする、とボーっとする頭を奮い立たせ、ほぼ徹夜で採点を終えました。(3年目くらいになってからは、「ごめん、また明日返す!!」と生徒を待たせたこともあります!)
いざテストを返却すると、生徒は一喜一憂。受験に関わるとあって1点でも高くしておきたいのが本音でしょう。すると、今度は出てくる出てくる「先生、点数違うんですけど」という生徒。もちろん不正のないように徹底していたので、完全に私のミス。配点や観点をややこしくしてしまうと、自分が大変な目に合うだけでなく、結果的に計算を間違えて生徒にも迷惑がかかってしまうと学びました。
以後、テスト作りの改善点として私がしたことは、
①社会科の性質上、はじめに資料を決め、構成を立ててから作問に取り掛かる。
②なるべく大問ごとに計算しやすいように、観点をまとめ、点数を統一する。(大問1は、全て知識理解の観点で各1点、など)
③テスト期間だけでなく普段の授業でどのようにテストに出すか考え、案をノートにメモしておく。
④テスト1週間前になったら怠けずに毎日数時間テスト作りにあてる。
⑤テスト2日前には完成させる。(校長が変わり全員2日前に管理職に提出することになったので、半強制的に厳守。)
初回の未知なるテスト作りを経て、2回目以降は見通しが経つようになったので前日深夜までかかることはさすがになくなりましたが(笑)、それでも毎回平均して1学年100点分のテストを作るのに30時間以上はかけていたかと思います。ベテランの先生でも20時間はかかるとおっしゃっていました。そうそう、解答用紙を作るのも結構時間がかかります。普段の授業やその他の仕事をこなしながらの30時間。どうしても残業、休日返上でした。もちろん、教科の特性や、担当する学年の数等にもよりますが、「テスト作りは多くの時間を要する」と思っておいた方が良いでしょう。笑い話で「昔、テスト当日に刷ってた人いたよ。」と聞いたこともあります。実際にそういう方もいらっしゃるかもしれませんが、生徒の成績を左右するものですから、慌ててミスが生じぬよう、万全に準備して、こちらも安心して迎えたいですよね。私のようにテスト作りをあなどって大変な目に合わぬよう、反面教師として記憶にとどめ、早め早めに作成できるよう頑張ってみてください。